現在、ゲームをするとなると大きく二つのスタイルがあります。
一つは、大きなテレビやモニターに映し出し、腰を据えて遊ぶ従来の据え置き機のスタイル。
もう一つは、スマートフォンにインストールし、場所を選ばず遊ぶスタイルです。
据え置き機のゲームは、じっくりと時間をかけて深いストーリーや美しいグラフィックを堪能できるのが魅力です。
一方、スマホゲームは、移動中やちょっとした空き時間など、手軽にどこでも遊べるのが大きなメリットでしょう。
今回は、この据え置き機のゲームとスマホゲームについて、これからゲームの企画を仕事にしたいと考えている方に向けて、ぜひ参考にしてもらいたいと思い書きました。
最後まで読んでいただき、自分の向かうべき方向性を考える一助になれば幸いです。
※本記事はあくまでも個人の見解となりますので、その前提にて参考にしてください。
スマホゲームとは

アプリストアからダウンロードして楽しむものがほとんどで、その多くは無料で遊べる「基本プレイ無料」という形式をとっています。
誰でも気軽に始められる手軽さから、世界中で多くのユーザーに親しまれています。
SNSとの連携機能を持つものも多く、友人や知らない人と手軽に繋がって一緒にプレイできるのも大きな特徴です。
スマホゲームの特徴
まず、据え置き機と異なり、専用のハードウェアを必要としないため、誰でも気軽に始められます。
さらに、一度リリースされた後も、イベントやキャラクターの追加、機能の改善といったアップデートが頻繁に行われ、終わりなく遊べるコンテンツとして提供されます。
これにより、ユーザーの長期的なエンゲージメント(繋がり)を維持します。
また、収益の多くは「課金」によって成り立っており、ゲーム内でアイテムやキャラクターなどを購入するシステムが組み込まれているのも、大きな特徴と言えるでしょう。
スマホゲームと据え置き機のゲームとの違い
据え置き機のゲームは、パッケージを購入して遊ぶ買い切り型が主流です。

そのため、開発者は作品としての完成度を追求し、ストーリーやグラフィック、ゲームシステムなど、すべてをクリアするまでの体験として綿密に設計します。
一方、スマホゲームの多くは無料で始められ、ゲーム内の課金で収益を上げます。このため、ユーザーに長く遊んでもらい、継続的に課金してもらうための「運営」が非常に重要になります。

ゲームデザインも、短時間で手軽に楽しめる、いわゆる「周回プレイ」を前提としたものが多く、一つの物語を体験するというよりは、日々のログインやイベント参加を促す仕組みが重視されます。
多くのスマホゲームは集金機である
ユーザーは無料でゲームを始められますが、ゲームを有利に進めたり、希少なアイテムやキャラクターを手に入れるために課金をするよう促されます。
この課金のサイクルを継続させるために、期間限定のイベントや新しいガチャ、ランキング争いなど、ユーザーの「もっと強くなりたい」「今しか手に入らないものを手に入れたい」という射幸心を刺激する仕組みが巧みに組み込まれています。

運営メーカーは、ユーザーが課金を続けてくれる限り、ゲームを終わらせる理由がありません。
そのため、終わりなくコンテンツを供給し続ける設計になっており、ユーザーからすると「いつ終わるか分からないゲーム」に時間とお金を費やすことになります。
多くのスマホゲームは作品として名を残せない
優れた作品は世界的な賞を授与され、何年経っても語り継がれます。
それは、開発者が「一つの作品」としてゲームを創造し、ユーザーがそれを「体験」として受け取るからです。
一方、多くのスマホゲームは、運営期間中は終わりなく続くゲーム性と射幸心を煽る仕組みで収益を上げ続けます。
そして、運営費と収入のバランスが取れなくなると、突然の告知と共にサービスを終了し、二度とプレイできなくなってしまいます。
この二つのゲームの性質は全く異なります。
据え置き機ゲームが「作品」として捉えられるのに対し、スマホゲームの多くは「いつでも遊べる、いつでも止められる」という性質から、ユーザーはそれを作品として受け止めにくく、一時的に夢中になったもの、程度の記憶しか残りません。
近年、過去の名作据え置き機ゲームが再評価され、再びプレイできる機会が増えているのに対し、莫大な運営費用を伴うスマホゲームは、一度サービスを終えると二度と遊ぶことができません。
たとえ印象的な作品があったとしても、運営が終了すれば後世に語り継ぐことは叶わないのです。
このことから分かるように、多くのスマホゲームはゲーム文化の上に成り立つものではなく、営業ツールとしての性格が強いと言えます。
そのため、作品として明確な終わりを迎えることはほとんどありません。
ユーザーの離脱と共に運営終了が近づくにつれて、タイトルへの関心や記憶も徐々に薄れ、最後には何もかもが消え去ってしまうのです。
スマホゲームの役割を考えると、作品として名を残せないのは、その性質上、仕方のないことなのかもしれません。

スマホゲームの全盛期と今
スマホゲームの市場が拡大し始めた初期は、少人数のチームで開発したシンプルなゲームでも、アイディア次第でヒットする可能性がありました。
当時はまだユーザーの目が肥えておらず、新規参入のハードルも低かったため、多くの制作者がスマホゲームの世界に飛び込みました。
しかし、現在では状況が大きく変わっています。
ユーザーは高クオリティなグラフィックや凝ったゲームシステムに慣れており、中途半端な作品では見向きもされません。
そのため、初期開発費は据え置き機並みに高騰し、さらにサービス開始後も継続的な開発と莫大な宣伝費用、運営費をかけなければ、ユーザーを獲得し続けることは困難になりました。
大金を投じてリリースしたにもかかわらず、わずか数ヶ月で「運営終了」となるタイトルも珍しくなく、非常に厳しい世界になっています。

スマホゲームの台頭で日本のゲーム業界が失ったもの
スマホゲームの台頭は、日本のゲーム業界に大きな変化をもたらしました。
その一つが、「技術力の低下」です。
手軽に開発できるスマホゲームの需要が高まるにつれて、据え置き機向けのハイエンドなゲーム開発を経験したことがないクリエイターが増えました。
結果として、最先端の技術を要するハイエンドゲームを創れる若い人材が育ちにくくなっているという側面があります。
手軽さの追求が、長期的には日本のゲーム業界の技術的基盤を弱体化させる一因となっているのです。
作り手としての心得
ゲーム業界を目指す皆さんの中には、「いつか大作の据え置き機ゲームを創りたい」と夢見ている人も多いかもしれません。
しかし、実際に業界に入ってみると、据え置き機向けの企画だけではなく、スマートフォン向けのゲーム企画を任されることも十分にあり得ます。
大切なのは、柔軟な発想を持つことです。
自分がやりたいことだけでなく、市場や会社のニーズ、そして何よりも「ユーザーが何を求めているか」を理解し、その時々で最適なゲームを提案できる能力が求められます。
据え置き機とスマホゲームでは、収益モデルもユーザーの遊び方も全く異なります。
そのため、それぞれのプラットフォームに合ったゲームデザインや企画の考え方を身につける必要があります。
中には、据え置き機ゲームの壮大な世界観を創り上げるよりも、スマホゲームの継続的なサービス運営や、ユーザーの心理を分析して楽しませる企画の方が向いている人もいるでしょう。
それは、けっして悪いことではありません。
だからこそ、就職活動の段階で、自分の力が発揮できそうな会社かしっかりリサーチすることが非常に重要になります。
その会社がどんなゲームを開発しているか、どんなプラットフォームに力を入れているか、そして自分の得意なことや目指す方向性と合っているか。
これらを事前に調べておくことで、入社後のミスマッチを防ぎ、より充実したクリエイター人生を歩むことができるはずです。
「作品」としてゲームを創りたい人も、「サービス」として長く愛されるゲームを創りたい人も、それぞれの道で素晴らしいゲームを創り出すことができます。
まずは幅広い視野を持ち、あらゆる可能性を探ってみることから始めてみましょう。

まとめ
据え置き機ゲームとスマホゲームは、どちらも「ゲーム」という言葉でくくられますが、その本質は大きく異なります。
据え置き機ゲームが「作品」として世界観やストーリーの完成度を追求するのに対し、スマホゲームは「サービス」として、ユーザーの継続的な利用と課金に重点を置いています。
これからゲーム業界を目指す皆さんは、自分がどのようなゲームを創りたいのか、どのようなキャリアを築きたいのかを、改めて考えてみる必要があります。
優れた作品として後世に残るゲームを創りたいのか、それとも多くの人に手軽に楽しんでもらいながら、ビジネスとして成功するゲームを創りたいのか。
それぞれの道にメリットとデメリットがあり、どちらが正解というわけではありません。
この記事が、皆さんの進むべき道を見つけるためのヒントになれば幸いです。
今までの「ゲーム企画入門」もよろしくお願いします!
スマホゲームとは、iPhoneやAndroidといったスマートフォンやタブレット端末で遊ぶために開発されたゲームのことです。